カジュアル 経済 #17 ー 「緊縮」がもたらすディストピア
こんにちは! iscandaruです! これまでの「税金の真実編」では税金に関するいろいろなことを学んできましたね!
今回はそのまとめとして、「税金の本来の役割と、緊縮の考え方」について説明していこうと思います!
前回の最後で「緊縮」という考え方を取り上げました。これを理解する上で必要になる知識をまず知っていただきたいと思います。 それは「プライマリーバランス」と呼ばれるものです。
別名「財政規律」とも呼ばれるこのプライマリーバランスなのですが、別に難しいものではありません。簡単に説明すると、
「国の歳出(支出)と税収のバランス」
のことです。つまり、「"使うおカネ"と"入ってくるおカネ"のバランス」が「プライマリーバランス」なんですね。
そして、この「プライマリーバランス」と「緊縮」の考え方が融合すると、
「国の歳出(支出)は『税収』の中で行わなければならない。」
という考えに至ります。これは「プライマリーバランスの黒字化」と呼ばれ、要するに「借金をなるべくせずに政府のおサイフ事情を黒字にしよう!」という意味になります。
ではこの「緊縮」「プライマリーバランスの黒字化」にはどんな効果があるのか、データを見ていきましょう!
「緊縮」に関するデータ
- 「プライマリーバランス(PB)黒字化」を達成したギリシャ、アルゼンチンは財政破綻した
- 「PB黒字化」はGDPの落ち込みを招き、強烈なデフレを誘発する
- 日本は「消費税」を支柱とした緊縮政策で消費の伸びが悪くなっている
http://mtdata.jp/data_69.html#zaimu
「税金の役割」
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「おカネの偏りを小さくするバランサー」
- 景気を安定させるため → ビルトイン・スタビライザー
- 格差を小さくするため → 貧富の差を小さくする
- 所得を再配分するため → 公共サービスはみんなで運営
- 日本円を流通させるため → 税金を集めるときには日本円を使う
- 政策的な目的など → 「炭素税」「たばこ税」など
ということで、これが「PB黒字化」がもたらした効果、いや「悪影響」です。ここでハッキリ言わせていただくと、現在の日本において「PB黒字化」および「緊縮」は「間違っている」と言わざるを得ません。
いままで学んできたような「通貨発行権」「おカネは情報」「政府の借金はおカネの供給」などに関わる知識を組み合わせると、面白いようにこの「プライマリーバランス」のオカシな点がわかるはずです。
ではこの「PBの黒字化」そして「緊縮」が、なぜ間違っているのかを検証していきたいと思います。
失われた「経済成長」
まず、「緊縮」の考え方によって生み出された「消費税」を例にとってその影響を見てみましょう。
上のグラフから「消費税が上がるごとに実質消費の伸び方が落ち込んでいる。」ということがわかるかと思います。 これはつまり、本当はもっと活発だったはずの消費活動が失われたことを意味します。
そして「消費が伸び悩むこと」はつまり「GDPが伸び悩むこと」になります。したがって、「本来できるはずのGDPの成長(=経済成長)が消費増税によって失われてしまった。」ということになってしまうんですね。
これはつまり、本来皆さんが得るはずだった所得が「緊縮」によって吹き飛んでしまった、ということですから、いかに「緊縮」の影響が強いかがわかっていただけたかと思います。
政府が黒字になる「PB黒字化目標」
でもその反対では…?
そもそも「PBの黒字化目標」は「税収の中で支出をして、政府のおサイフ事情を黒字にする。」という家計簿に似た発想の目標でした。
しかし、カジュアル経済#13で確認したように、「誰かが黒字になる時は、反対で必ず誰かが赤字になる」という"世の中の法則"があるんでしたよね。
ということは「政府が黒字」になるためには、反対で誰が赤字にならなければいけません。 では一体誰がその役を引き受けなければいけないかというと、「民間」か「海外」のどちらかです。
「海外」は輸出入の関係ですからともかくとして、「政府が黒字」になると反対で「民間が赤字」になることがあります。つまり「私たちが貧困化する」可能性があるのです!!
したがって「プライマリーバランスを黒字化しまーす!」というのは「国民を貧困化させまーす!」と声高に宣言するようなモノなのです。ちょっと正気とは思えませんね…。
しかも政府というのは、利益などを考えなくて良い「NPO」のような存在です。ですから本来は、率先して赤字を引き受け、国民を豊かにすることこそが政府の役割なんですね。
さらに日本政府の場合、「通貨主権」(カジュアル経済#3より)を持っているため、「財政破綻」になることはほとんどありえません。
http://mtdata.jp/data_69.html#zaimu
その証拠に、政府の借金(オレンジ棒グラフ)が増えているのに、「政府の制約」であるインフレ率(コアコアCPI:青の折れ線)は下がり続けていて、今はほぼ0%です。(ちなみに「国債の格付け」などに関わる金利(黒折れ線)も0%付近です。)
ということは「政府の借金が膨らんでも、国民が困るようなインフレにはなっていない。」ことになりますよね。ですからなおさら政府が赤字を拡大して、国民を豊かにするべきだ、ということが言えるんです。
おカネが消えて無くなる!?
「借金返済の罠」
「緊縮」という考えのもとでは、「政府の借金は悪」ということになっています。 ではその「政府の借金」を"返済する"とどうなるのでしょうか?
話は「おカネの正体編」にまで遡ります。 おカネの正体は「債務と債権の記録」であり、「誰かが借金をした時におカネが誕生する」んでしたよね!
「誰かが債務を負った時におカネが作られる」のなら「債務を精算する=おカネを返した時」にそのおカネはどうなってしまうのでしょうか?
その答えは「この世から消えて無くなる」です。 ウソのように聞こえるかもしれませんが本当にそうなります。
「お金の正体編」ででてきた「肩たたき券」を思い出してください。 あれは娘さんが「肩たたきをする」という債務を負っていたからこそ成立する「おカネ」でしたよね。
肩たたき券
- この券を使えばわたしが10分「肩たたき」してあげます
- この券は他の人にゆずってもOKです
- この券が使えるのは一度きりです
では、誰かがその券を使って娘さんに肩たたきをしてもらったらどうなるでしょう? 娘さんが「肩たたき」という債務を果たすことになり、その「肩たたき券」は効力を失ってしまいます。
したがって「債務を果たす行為」=「借金を返す行為」はおカネを消しているんです。 これはもちろん「政府の借金」にも当てはまります。
つまり、政府が集めた税金を「借金の返済」に使ってしまうと、そのおカネはこの世から消え去り、結果的に「私たちからおカネを奪った」ということになってしまうのです。
こんなことをして、「PBの黒字化」を達成したとしても、残るのは「国民からおカネを奪い、デフレを深刻化させた。」という事実だけですから、こんなにも愚かなことはありません。
このように、「緊縮」「ブライマリーバランスの黒字化」には問題がたくさんあります。 ご理解いただけたでしょうか?
本当は、こんなふうに悪いところばかりを取り上げるのはよくないのですが、ネガティブキャンペーンをしているわけではなく、本当にいいところが見当たらないんです。
そして非常に残念なことに、現在の日本ではこの「プライマリーバランスの黒字化」が重要視されています。全ては「おカネ=モノの誤解」から始まっているのですが、まだこの呪縛から逃れられていないんですね。
この呪縛から逃れ、経済成長を再スタートさせるためにはまず!今まで説明してきたような「正しい経済の知識」を広めていくことが必要です。
そうして「反緊縮」の流れを作り出し、政府が適切に支出の拡大を行い、デフレを脱却することによって国民生活をもっと豊かにすることができるでしょう。
日本が「緊縮」によって貧困化し、荒廃したディストピアにならないためにも、皆さん一人ひとりのお力が必要です。
ぜひ、今まで得た知識を少しでも広めていただけたらなと思っています。
ということで今回は「緊縮がもたらす悪影響」について考えてきました! いかがでしたか?
今回をもちまして「税金の真実編」は完結です。今までの4シリーズのを通して、いろいろなことを学んできましたね。
全てのシリーズを理解されたあなたならきっと、世の中に正しい知識を広め、国民を豊かにする「経世済民」の一端を担えるのではないかと思います。
これからも一緒に経済について正しく、そしてカジュアルに学んでいきましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ではまた!