カジュアル 経済 #13 ー 誰かの黒字は誰かの赤字
こんにちは! iscandaruです! 前回までのカジュアル経済では「おカネの正体」について迫ってきました!
「おカネは債務と債権の記録」ということがわかると、いろいろなことが見えてきましたよね! 今回はそれを踏まえて、前回の最後に触れた「政府の借金」とおカネの関係について考えていきます!
その前にひとつ、重要なことを確認しておきましょう。 前回の途中に出てきた「誰かの黒字は誰かの赤字」というのは覚えていますか?
「おカネというのは誰かが債務を負わないと生まれない」という性質から「誰かが黒字になるためには誰かが赤字にならなければいけない」んでしたね。
でもそんな性質があると、圧倒的な勝者と敗者を生んでしまうように思えませんか? これは「誰かが豊かになる代わりに誰かが貧しくなってしまう」という仕組みになっているわけですからね。
でも安心してください。このおカネのシステムはそんな残酷なものではありません。今回のエントリーを読めば「それなら大丈夫だ」ということがわかるはずです! では早速始めていきましょう。
まず、国の中で「おカネを持っている存在」には以下の4つがあります。
「家計」「企業」「政府」「海外」
これら4つはそれぞれ「経済主体」と呼ばれます。そして先ほどの話で言うと、この中で「誰かの黒字は誰かの赤字」が成立しているというわけです。
では、実際のデータを見てみましょう。
「日本の資金過不足」に関するデータ
http://mtdata.jp/data_68.html#sikinkabusoku
- 「家計」「企業」「政府」「海外」の資金過不足を合計すると必ず0になる。
- 「企業(青)」に注目すると1999年以降黒字になっている。
- 「政府(オレンジ)」に注目すると赤字になっていることが多い。
- 「家計(灰色)」はほぼ黒字、「海外(黄色)」はほぼ赤字となっている。
というわけで、データを見ると「誰かの黒字は誰かの赤字」という意味がわかるのではないでしょうか? グラフを見ると0の線を軸にして、棒グラフが対称になっていることがわかるかと思います。
少し驚くかもしれないですが、4つの経済主体の資金の過不足を足し合わせると本当に0になります! つまり、「誰かの債権(=黒字)がそのままそっくり誰かの債務(=赤字)になっている。」というのが現実でも成り立っているわけです。
では、その中身を確認していきましょう。まず、私たちの貯金などがメインの「家計」はプラス(上側)になっていることがわかると思います。多くの人にとって借金をすることよりも、貯金を増やすことが多いですよね。このグラフではそれを表しています。
他の経済主体はどうでしょうか? まず、注目すべきは「企業」です。企業は20世紀末あたりを境に、赤字と黒字がひっくり返っています。
本来企業は銀行などから「借金」をして、投資をすることによって生産性を高め、「利益を拡大すること」が目的の存在です。したがって企業にとっては「借金を負っている状態」が「普通」で、その借金を元に利益を生み出しています。
ではなぜ、21世紀以降企業の資金がプラスに転じているのかというと、それは「法人税」が関わっていたりします。
法人税は90年代以降下げられ続けてきた経緯があり、それで企業が資金を貯め込むようになったため、「内部留保」という形で資金の過不足がプラスに転じているわけですね。
そして本当は企業が資金が増えているのには「もうひとつの要素」が大きく絡んでくるのですが、それはまた別の機会に話そうかなと思います…!
どちらにせよ近年では「家計」と「企業」という「民間の経済主体」がどちらも「黒字」になっています。(コロナ禍の影響で現在は分かりませんが…)
では「誰かの黒字は誰かの赤字」という原則からすれば、民間の反対に「赤字」になっている経済主体があるはずですよね。 それが「政府」と「海外」です。
まず海外が「赤字」となっている理由を簡単に説明すると、日本は「輸入」よりも「輸出」の方が金額的に多かったり、海外に持っている純資産が世界第一位だったりと、対外的には「お金持ち」の国です。
そう言った理由で日本が黒字になっているので海外の経済主体は赤字になっている、というわけです。
さて、ここからが本題なのですが、経済主体のなかで大きな赤字を抱えているのは「政府」です。特に97年以降、日本がデフレに突入してからというもの、政府の赤字は拡大しています。
http://mtdata.jp/data_69.html#zaimu
これは政府の債務残高、つまり「赤字の累積額」を表しています。これを見ると、どんどんと「政府の借金」が増え続けていることがわかりますよね。
しかし、これまで散々やってきたように「政府の借金」は通貨発行権があるので、インフレ率が適切な限りこの借金は「問題ない」んでした。
グラフと見るとわかりますが、政府が赤字(棒グラフ)を増やしても、インフレ率(折れ線青)が上昇していないため、現実的にも大丈夫だということが読み取れますよね。
ですから企業のように利益を求める必要がない政府は、今のところ「赤字」が拡大することに対して何のリスクもありません。
逆に、「誰かの黒字は誰かの赤字」という原則があるので、「政府が赤字を拡大してくれないと、民間が黒字にならない」わけです。
ということは「政府の借金」こそが、国民が豊かになり、経済成長するために必要不可欠な「おカネの供給」だということがわかるかと思います。
現在、コロナ禍で経済が冷え込み、収入が落ち込んでいる民間を救う(赤字を少なくする)ためにはおカネに限界のない政府が赤字を増やして、おカネを支出してくれる他ないでしょう。
でももし、「政府の借金はなるべく減らさなければ」という意見が通ってしまうと、「国民におカネをなるべく出さないようにしなければ」ということになり国民はバタバタと倒れてしまいます…。
これでは多くの国民が貧困化し、「格差の拡大」によって弱肉強食の世界になってしまいます。最後には国の供給能力すらも失われてしまうかもしれません。そんなのは嫌ですよね。
それを防ぐために、今回説明してきたような知識をきちんと理解し、広めていく必要があるのではないかと私は思っています。
…と、少し深刻な話になってしまいましたが、今回はここまでにしておきたいと思います!
「誰かの黒字は誰かの赤字」という世の中の決まりについて、理解できたでしょうか?
このおカネのシステムは必ずしも残酷なものではなく、「おカネの限界がない政府が赤字を拡大してくれれば、反対に民間が黒字になる」ということが掴めればバッチリですね!
というわけで突然ですが、この「おカネの正体編」は今回で完結となります! 最初の「物々交換」の段階からは圧倒的に「おカネ」について理解できるようになったのではないでしょうか?
これまでカジュアル経済を読んできてくださった皆さんは「経済」について相当理解されているかと思います。少しでもこの知識を広めていただいて、これからどうしたら良いのかを考える「きっかけ」になればいいなと考えております…!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ではまた!