カジュアル 経済 #11 ー 「おカネ」の正体は…「肩たたき券」!?
こんにちは! iscandaruです! 前回のカジュアル経済は「おカネは物々交換から生まれた」という説がマチガイだということを検証したエントリーでした。
簡単におさらいすると、物々交換でおカネが生まれたのなら「おカネ=モノ」ということになる。しかしそれだと「おカネにキズがついたとき」や「銀行預金」の説明ができないんでしたね。
本当は「おカネ=モノ」としてしまうと生じる"不都合"が他にもたくさんあるのですが、ここでは割愛します。 要は「おカネ=モノ」ではない、ということがつかめれば大丈夫です!
そしてここまで来ると、多くの方が疑問に感じると思います。
「おカネがモノじゃないんなら、結局『おカネ』ってなんなのさ!」
ごもっともなご指摘です。 散々「おカネはモノではない」と言い張ってきましたが、その正体について明かしてはいませんでしたね。 大丈夫です、今回のエントリーでわかりますよ…!
では単刀直入にいいましょう。 ズバリ、「おカネの正体」とは・・・
「債務と債権の記録」です!
・・・え? 自信満々の割に何言ってるかわからないって? ごめんなさい。もちろんそうだと思います。いきなり「おカネは債務と債権の記録だ」なんて言われても、なんのことやらさっぱりですよね。
では、ひとつひとつ解説していきます。 まず「債務と債権」についてです。これは借金をしたときに使われる用語で「債務」は借金を返す側の「義務」のこと、「債権」は借金を返してもらう側の「権利」のことです。
例えばAさんがBさんから100万円のおカネを借りたとすると、
Aさんは100万円の「債務」がある。
Bさんは100万円の「債権」がある。
ということになります。 つまり、債務と債権というのは「誰が借りた人で、誰が貸した人なのか」を表すわけです。
では次に、「債務と債権の記録」の「記録」とはなんでしょうか。 これは「借用書」、正確には「借用書に書かれている情報」のことです。
もしみなさんが誰かにおカネを貸すときに、「返してね」の口約束だけではものすごく不安ですよね。ですからふつう借金をする時は「AさんはBさんから100万円を借りています。」というような「借用書」を書いて、「借金をした証拠」として残しておくわけです。
そしてこのとき、重要なのは借用書本体の「モノ」が大切なのではなく「誰が誰にいくら貸した」という「情報」が大切、ということです。この「情報」こそが「おカネを返すための証拠」となるんですね。
以上から、もう一度「おカネの正体」について言い直すと、
「おカネ」は「債務と債権の記録」
=「借りた人と貸した人、借金の金額を書いた借用書の情報」
ということになります。ちなみにここでは「借金の金額」と書いていますが、借りるのは必ずしも「おカネ」である必要はありません。「何をどれくらい借りた」というのが情報としてわかればいいのです。
ということで、「債務と債権の記録」の意味はわかっていただけたと思います。
では、なぜこれが「おカネの正体」になるのでしょう?
もう一度、例え話に戻ります。 先ほど100万円を貸したBさんが、今度はCさんに100万円の支払いをしなければいけないとしましょう。
このとき、もちろん「現金」で100万円を返してもいいのですが、Bさんの手元には「Aさんに100万円貸している」という情報が書かれた「借用書」があります。よくよく考えると、これでCさんへ支払いをしてもいいですよね。
なぜなら、その借用書の「債権」をBさんからCさんへ移してしまえば、結果的にAさんからCさんへ100万円が支払われるのですから。注:実際の手続きとは異なります。
ここで、少し考えてみましょう。この「借用書」はいま、Cさんへの100万円の支払いの際に使われました。 ということはこの「借用書(の情報)」は「100万円分のおカネ」として機能したということになりますよね。
つまりこれは「BさんからCさんへ100万円を渡した。」と同じ行為といえます。したがってこの場合「借用書の情報=おカネ」という関係が成り立つんです。
少し難しかったでしょうか? もうすこし別のアプローチもしてみましょう。 たとえばあなたの手元に、こんな「券」があったとします。
肩たたき券
- この券を使えばわたしが10分「肩たたき」してあげます
- この券は他の人にゆずってもOKです
- この券が使えるのは一度きりです
かわいらしい券ですね。なんともほっこりしてしまいそうですが、そこは置いときます(笑)
この「肩たたき券」を持っているあなたは、仕事が忙しく、今「皿洗い」をしてほしいとします。そこであなたはパートナーにこの「肩たたき券」を渡して皿洗いしてもらいました。
すると今度はそのパートナーは別の人にこの「肩たたき券」を渡して「りんご1個」をもらいました。そして今度はその人が・・・
と、なっていくわけですが、この「肩たたき券」、何かに似ていませんか?
そうこの肩たたき券は実は「おカネ」と同じ機能をしているんです。
試しに「肩たたき券」の部分を「おカネ」に読み替えてみてください。先ほどの"ほっこり"は吹き飛んでしまいますが(笑)しっかりと当てはまることがわかると思います。
ではなぜ、この「肩たたき券」が「おカネ」として機能したのでしょう? それはもちろん、この肩たたき券が「債務と債権の記録」だからです。
この「肩たたき券」には「肩たたきをする"わたし"=債務者」と「肩たたきしてもらう人=債権者」そして「10分の肩たたき=対価」がきちんと「情報」として書かれています。
だからこそ、この券を使って「皿洗い」や「りんご1個」といったモノやサービスと交換することができたのです。
以上から、おカネの正体はこの肩たたき券のように「債務と債権の記録」だ、ということが言えるんです。これでわかりましたね!
この「おカネ=債務と債権の記録」ということさえわかってしまえば、前回の疑問点はたちどころに解消します。
まず、「おカネ」は「モノ」ではなく債務と債権の記録という「情報」ですから、「傷ついた金貨」だろうが「ボロボロのお札」だろうが関係ありません。きちんと「情報」がわかればそれは「おカネ」として機能します。
次に、銀行預金ですがこれも「銀行預金が現金紙幣より7倍多い」という事実があっても構いません。なぜなら、おカネは「情報」ですから、「現金紙幣」や「銀行預金」といった"いろいろな形"で存在していいんです。
ですから、「銀行預金の量=現金紙幣の量」である必要はありませんし、銀行預金が現金よりどんなに多くても別に問題ありません。
ということで今回は「おカネ」は「債務と債権の記録」だ、ということについて説明してきました!いかがでしたか?
こうして考えてみると、普段使っている「おカネ」の見え方も変わってきますよね。「おカネ」は「情報」だということがわかれば「電子マネー」や「クレジットカード」などもスッキリ理解できるのではないでしょうか?
今回得られた知識を元に、次回は「おカネはどうやって生まれるのか」について考えていきます。
「債務と債権の記録」はいかにして生まれるのか、そしてみなさんが使っている「現金」はどのようにできているのか…。次回、この謎に迫っていきます!!お楽しみに!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
ではまた!